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道しるべ~第2しもざと通信「カルシウムとリンは重要です」

 カルシウム(Ca)とリン(P)は骨の主成分です。ところが、透析患者さんでは血中のリンは上昇し、カルシウムは逆に低下します。この状態が長く続くと、骨がもろくなって骨折を起こしやすくなったり、骨の痛みを感じられるようになります。これを「腎性骨症」と言います。また、骨だけでなくいたるところの関節の周囲にカルシウムが溜まって、痛みを起こすことがあります。これを「異所性石灰化症」と言います。これを防ぐには、日頃より

カルシウム(mg/dl)×リン(mg/dl)<65 (透析前値)

となるようにコントロールします。
最近のトピックスとして、この「異所性石灰化症」が原因で、

  1. 狭心症や心筋梗塞が出現すること
  2. 心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症など)が出現すること
  3. 消化管出血(虚血性腸炎など)が出現すること

などがあり、患者さんの長期予後(10年、20年、30年)に大きく関与していることがわかってきました。リンは透析で除去されますし、カルシウムは透析液中から血液に補給される仕組みになっています。(透析前・後の採血データを見て下さい)
しかし、リンはあらゆる日常食品に含まれており(たんぱく質の多いものほどリンも多く含まれています)、避けることは困難ですが、特にリンが多く含まれている食品(高リン食品表をお渡ししています)の制限には十分、注意を払って下さい。透析前値で「6.0mg/dl」以下になるように努力して下さい。
 十分な栄養を取って頂くなかでリンの摂取を避けることは困難ですから、皆さんはリン吸収抑制薬(腸での)として

  1. 炭酸カルシウム錠(炭カル錠)または2、の併用で。
  2. レナジェル錠
  3. りんご酸錠(市販)

を、服用されています。本格的にリンを下げるには「炭カル」で、9~16錠/日、「レナジェル」で12~24錠/日が必要と言われています(ただし、炭カルは6錠/日以内が望ましい)。内服量の多さにびっくりされるかもしれませんが、この薬は腸で作用する特徴があり、副作用は極めて少ないので安心してください。ただし、便秘傾向になる方がおられるので便通には注意していただきます。
朝・昼・晩の食事毎(直前~食事中が望ましい)にはもちろん、おやつなどの間食をされた時にも2~3錠追加して服用して下さい。カリウム(K)と同様にリンにも注意を払って下さい。
 また、「腎性骨症」の一つとして重要な病気に「副甲状腺機能亢進症」があります。副甲状腺は「のどぼとけ」の近くにあり、甲状腺の裏に隠れている米粒大の小さなホルモン臓器で、上下左右4個あります。カルシウムとリンのバランス異常(カルシウム×リン>70)が長く続くと副甲状腺の働きが強くなって「
PTH」とよばれる副甲状腺ホルモンが異常に高くなり、骨がもろくなります。血中のカルシウムを増やすために活性化ビタミンD剤(内服としてアルファロール、ワークミン)を使用しています。ただし、カルシウムとリンののバランスもあってビタミンD剤を使用していない方もおられます。大きな目安として透析歴約10年(早い方で5~6年)の患者さんには骨痛や関節痛などの症状がなくても第二赤十字病院・移植外科・副甲状腺外来を受診し、副甲状腺の精査(エコー、採血等)で、ある一定サイズ以上に腫大した副甲状腺に対しては一部を取り除く(一部は前腕に移植)手術が必要となります。
 患者さんが長く元気でおられるためには、このカルシウムとリンのバランスを良好に保つことが重要なことがわかってきたのです。(H17年現在)

 カルシウムとリンの指標(目標)を下記に示します

(A)

 カルシウム(mg/dl)×リン(mg/dl) < 65

(B)

      透析前             透析後      
   カルシウム      8.5~10.5    <  11.5
   リン       4.0~6.0    >  2.5

(C)

    カルシウム(Ca)           リン(P)      
 ビタミンD       アルファロール
 ワークミン      
   ↑    
リン吸収抑制剤 炭酸カルシウム    
  ↓
  レナジェル    →   ↓
   リンゴ酸    ↑
  ↓

(D)
副甲状腺ホルモン(PTH高感度):10000pg/ml 以下にとどめること

 もし、14000pg/ml以上になったら オキサロール(注)2.5~5.0μg(透析毎)
 もし、40000pg/ml以上になったら オキサロール(注)10μg(透析毎)
 使用することになります。

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道しるべ~血圧はなぜ高いのでしょうか

 透析を受けておられる患者さんの約80%の方に高血圧症(収縮期140以上/拡張期95以上)を認めます。また、この高血圧のコントロールがあまりうまくいかないと患者さんによっては心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓病や、脳出血、脳梗塞などの脳疾患を起こす原因になります。
 本来、体内には抗利尿ホルモンなどの体内水分を調節するホルモンがあり、これが腎臓に働き、水分や塩分の排泄や促進することで体液の恒常性を保っていますが、尿量が減少した透析患者さんの血圧の上昇や低下の原因は体液(水分)の変動(貯留と減少)と塩分の過不足によるものが大部分と考えられます。
 皆さんは、良好な水分管理をしていても、透析と透析の間は4-5%(中には8-10%)の体重増加(水分貯留)があります。この増加した水分が血管内に貯まり、心臓への容量負荷が高まることにより血圧が上昇します。心胸比(CRT)の増大であらわれます。
 次に、エリスロポエチンの影響があります貧血の改善には画期的な革命薬として登場し、ほとんどの方に使われますがヘマトクリットを30以上に保つとすると副反応として血圧を上昇させます。そしてシャントの存在が心臓への血液還流を増大させ血圧を上昇させます。さらに、本来の動脈硬化症に由来して血管の弾力低下による高血圧症があります。高齢者や糖尿病の方に多いタイプです。なかなかコントロールは難しく、種々の降圧剤が必要です。
 では、どうすればうまく血圧を調整できるのでしょうか?
 解決する方法は以上お話しました原因を1つずつ是正すれば良いのです。

①適切な基礎体重(ドライウェイト)の設定(厳しい設定になりますので患者さんの理解が必要になります)。
②透析と透析の間の体重増加(水分貯留)を5%以内とする。

 これが高血圧対策のまさに鍵です。これで高血圧の70%は解決できるはずなのです。基礎体重を適正にしてもなお血圧が高い場合や、体重を適正にすると足がつったり、血圧が下がったり、狭心症を起こしたり、脳虚血を起こしたりする方には基礎体重は少し甘くせざるを得ませんが(高齢者や糖尿病の方に多い)、その分血圧が高くなる方には作用機序の違う種々の降圧剤を使うことになります。
 逆に血圧が低い人は基礎体重がきつかったりしていないか、あるいは心機能に問題はないかを検討しますし、ドプスやリズミック(昇圧剤)の服用や透析中であれば補液、エホチール(昇圧剤)の持続注入や高ナトリウム透析等を行います。

MEMO
 1Kgの体重増加(1Kgの水分を摂取)は食塩でいうと8gを摂取したことになります。したがって、5-6Kgの体重が増えた方はこの間40g程度の塩分を取ったことになります。この食塩過剰摂取を根本的に抑えないと当然口がかわき(のどがかわく)、水分をとってしまって体重が増加する原因となるのです。血圧も当然、高くなります。
 体重増加が多い方はいったいどのくらい塩分を多くとっているかを確認してみてください。ちなみに塩分の一日摂取量は、8g以下が理想です。

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道しるべ~ドライウェイトの設定の目安

参考にして下さい。

1)心胸比(CTR)  男性 <52%
 女性 <55% 

 

 あくまで目安です。個人

 差は大きい。心筋肥

 大のある方は別です。

2)血ガス PO2 >90

 

O2sat >95 (肺での酸素

交換度の目安です。)

3)h-ANP  < 100  

 
 心不全の程度の目安 

  です。

4)心Echo

 
  心のう水の貯留がないこと。

  心機能が保たれていること。

  (心収縮拡張性の目安)

 

5)透析中の血圧の変化

              自覚症状(声のかすれ、足つりなど)。
  
                時間除水の多い方は別です。

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道しるべ~第2しもざと通信~

 しかし、このドライウェイトまで透析終了時には下げておかないと、次の透析(特に2日あき)までの体重の増え方(水分の取り方)によっては心臓が大きくなったり、肺に水がたまったり、となるわけです。また、このドライウェイトは機会ある毎に設定しなおしていきます。たとえば、食欲がなくなってやせれば、筋肉や脂肪などの固形分が減少した分だけドライウェイトをさげねばなりません。

 特に高齢者や糖尿病の方は、一週間程度の期間の食欲の低下だけでも痩せられるのが通常です。「わたしのドライウェイトは50Kgだったから、48Kgまで引かれては困る」「食欲がなく体もえらい(だるい、苦しい)のにどうして体重を下げるのか」という言い方をされる患者さんがいます。確かに先日まではドライウェイトは50Kgだったのですが食欲が落ちてやせて筋肉や脂肪が少なくなったのに50Kgのままとすれば、やせた分だけ体内血液内の水分が増えてしまいます。その結果、むくみが出たり、心臓が大きくなったり、肺に水がたまったりするのです。逆に食欲が改善し、太ってくればドライウェイトを上げることになります。そうしないと脱水状態になるからです。

 高齢の方や、重い合併症(心・肺など)を持っておられる方は、私がその時々の患者さんの全体像を見てドライウェイトを決めますが、若年者や安定した体調の方は御自分でドライウェイトを設定されるのが良いと思います。

 なぜならば、日頃の症状や、食事の内容、筋肉・脂肪の量も実感されるのはご本人であるからです。ドライウェイトの設定の根拠とすべき材料として、日頃の透析記録、心胸比表(CTR)、血ガス所見等の情報を提供しますのでご参考になさって下さい。ご自信の問題の1つとして、まずはドライウェイトの設定から積極的に透析に参加されることは非常に良いことと考えます。

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道しるべ~第2しもざと通信~

 ドライウェイトは自分で決めましょう

 透析を始めて数ヶ月経つとだんだんと尿量は減少し、なかには0に近い方もいらっしゃいます。飲水や食事として口から入った水分の大部分は体内(主に血液中)にたまるので透析によって引かなければなりません。したがって、体重は体内の水分の増減に反映して透析によって減少し、次の透析までに増加するというサイクルをくり返すことになります。

 したがって、透析で水分を引いてから次の透析(特に2日あき)までに体重が増えて、肺に水がたまったり、心臓が一定以上に大きくならないために、透析後に余分な水分が体にたまっていない体重のことをドライウェイト(基礎体重)という特別な体重を設定する必要があります。

 このドライウェイトを設定する基準として、患者さんの自覚症状(手足のむくみ、血圧、体のだるさなど)や、画像診断(胸部レントゲン、心エコー等)、血液検査(h-ANP、ヘマトクリットなど)などがあり、日頃の透析の経過も参考にして総合的に決めます。

 重要なことは、このドライウェイトの設定の良し悪しが患者さんの生命予後(特に心・肺の負担として)に直接的にかかわることです。

 特にドライウェイトが甘くなっていくと、心負荷が日常的に増し、心不全状態となり、長生きが出来なくなるのです。このドライウェイトの設定の見極めは、透析専門医の経験と能力が最も発揮される専門分野の1つと言えます。

 もちろん、このドライウェイトにはある程度の幅があります。若年者には相当の幅がありますが、高齢者やもともと心・肺に合併症のある方、糖尿病の方々はその幅が非常に少なくドライウェイトと肺の水だまりになる体重の差が2-3Kgしかない場合があり、2日あきの場合、ちょっと水分を飲みすぎただけで肺水腫(肺に水があふれ、呼吸困難となる状態)になってしまう方がおられます。

 そもそもドライウェイトは患者さんにとって決して楽な体重ではなく、むしろ、透析の後半に血圧が下がったり、体がだるかったりと感じるつらい体重です。

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